(Trance)’90年代後期のおすすめトランス10選 Part.1

日本では2001年頃から本格的にトランスのブームが始めましたが、本場ヨーロッパでは90年代後期からトランスシーンが大きく盛り上がりを見せ、この時期にも数多くの名曲が発表されました。

第一回は90年代の有名曲にスポットをあてて紹介したいと思います。

この時期は選ぶのが難しいぐらいヒット曲が集中していますので、今回紹介できなかった曲もPart.2以降紹介していく予定です。

なお、当サイトの楽曲紹介については、主にジャンル初心者向けをターゲットとしておりまして、DJ・アーティスト・楽曲の背景、情報面を紹介する事を重視しております。

基本的に曲を技術的に批評するブログではないのでご了承ください。

目次

Paul van Dyk – For an Angel (PvD E-Werk Club Mix) (1998)

Paul van Dyk(ポール・ヴァン・ダイク)はドイツを代表するDJで、ドイツ民主共和国(旧東ドイツ)出身。
まだドイツが東西に分裂していた頃、西ドイツから流れてくるラジオを聴いて音楽に興味を持ったという逸話があります。

1997年には、Age Of Love – The Age Of LoveのRemix、BT – Flaming Juneで共同作曲を手掛けるなど既に高い人気を獲得していましたが、For an Angelのヒットで彼の人気は決定的になりました。

現在のメインストリームのトランスの原型は90年代にドイツで発展し、90年代後期に入るまでのトランスシーンを主に牽引していたのは間違いなくドイツ勢でした。

この時代のドイツ系のトランスは、テクノの影響を大きく受けた曲が多い傾向があったのですが、Paul van Dykの楽曲は1999年後期から主流となる、オランダ、イギリス系のトランスに近い要素も含んでおり、2000年代のトランスシーンにおいてドイツ勢の勢いが相対的に衰える中でも、人気を維持し続けました。

 

Trouser Enthusiasts – Sweet Release (Trouser Enthusiasts Full On Mix) (1999)

 

Trouser Enthusiasts(トラウザー・エンスージアスト)はDavid Green, Ian Masterson, Mitch Stevensの三人で構成されるグループ。
この時代にRemixを多く手掛けましたが、本人の楽曲はこの1曲のみ(他にコラボリリース曲が一つ)

90年代のトランスシーンではインストゥルメンタルが主流で、ボーカルトラックのヒット曲はそこまで多くありませんでした。
そのような環境化での数少ないヒット曲の一つになります。

この曲をリアルタイムで聴いたわけではないのですが、はじめて聴いた時は先進性に驚きました。
2000年代に入り本格的にトランスの商業的な成功が認知されはじめると、ボーカルトラックが大量に世に出ましたが、それらと比べても遜色がないものです。

 

System F – Out Of The Blue (Original Mix) (1999)

 

2021年現在、今なおトランスシーンを最前線で牽引しているFerry Corsten(フェリー・コーステン)の代表曲の一つ。

別名義のMoonman – Galaxia (1996)、Albion ‎– Air (1998)などのヒットで、既に当時のトランスシーンで名の知られていたFerry Corstenでしたが、1998年のGouryella – Gouryella (Tiestoとのコラボ名義)や、この曲のヒットで人気不動のものとしました。

日本でも大手レコード会社からライセンスリリースされた事で知名度・人気が高い曲です。
(日本人気が高すぎたのか、2ndアルバムのSystem F – Togetherは日本のみの独占リリースとなりました…しかもコピーコントロールCD…)

この時期のFerry Corstenの楽曲を聴き、影響を受けた若手アーティストによる楽曲が、2000年代に多くリリースされる事になります。

なお、2010年にTiesto, Laidback Luke, Giuseppe OttavianiなどをRemixerに迎えたRemix盤、Out Of The Blue 2010がリリースされていますので、そちらもオススメです。

ジャンルはトランスであるのは変わりないのですが、キャッチャーな路線の曲はこの頃のSystem F名義ぐらいで、早くも2000年代の中頃からエレクトロ寄りに作風が変わっていますので、ご注意ください。

System FやGouryella初期時代にFerry Corstenが好きだった人の評価は今一つなんですよね。

ただそれは初期の特定のファンだけの意見でして、その後もトランスシーンにおいて大きな支持を維持しています。
私も初期の楽曲のファンですが、それはそれとして、エレクトロ系のシフトした曲も大好きです。

エレクトロ寄りにシフトした初期の頃では、この曲とかおススメです。

Ferry Corsten – Beautiful (2007)

 

Moonman – Galaxia (Original Mix) (1996)

 

Ferry Corstenの別名義で、彼の初期ヒット曲になります。

サウンドなどは若干テクノ寄りかな?と感じる部分もありますが、3年後のOut of The Blueに通じる部分も感じられ、個人的には彼の成功の原点だと考えていますね。

Out of The Blueと異なり、Remix盤のリリースやリメイクはされていませんが、2009年に他のアーティストによるカヴァーがFerry Corstenのレーベル、Flashover Recordingsから正式リリースされています。

Treadstone – Galaxia 2009

 

Airscape – L’Esperanza (Original Mix) (1999)

 

Airscapeは、Svenson & Gielen名義でも知られるベルギー出身のDJ、Johan Gielen(ヨハン・ギーレン)とSven Maes(スヴェン・マエズ)よるコンビ名義。
…として知られていますが、初期の頃はSven Maesが参加していなかったり、楽曲によっては別のアーティストも作曲に参加していたりしますので、名義的にはJohan Gielen主導と考えてよいかもしれません(Sven Maesも2005年には脱退してコンビを解消しています)

ただ、過去に読んだインタビュー記事で、DJ活動をJohan Gielenが、作曲活動はSven Maesが主に担当していたと記憶していますので、この曲についても作曲面ではSven Maesの影響が大きいと思われます。

L’EsperanzaがヒットするなどSvenson & Gielenの主力ともいえる名義でしたが、2005年にAirscape – Sosei (ID&T)で復活するまでの約6年間、レコード会社とのゴタゴタで長らく名義を使用できなかったり、その復活曲がリリースされたID&Tも同年の2005年にレーベル部門が閉鎖されたり、なかなかワチャワチャした経緯をたどっています。

Johan Gielenはかつて日本にあったクラブvelfarreでレジテントDJとして活動していた時期もあり、日本とも縁が深いDJになります。
Soseiというタイトルも、そのまま日本語で「蘇生」から取られたものですね。

 

BT – Flaming June (BT & PvD Original Mix) (1997)

 

BTはアメリカ人アーティストで、本名はBrian Wayne Transeau(ブライアン・ウェイン・トランソー)
DJというより音楽プロデューサーで、映画音楽なども多数手がけています。

この曲はBTのセカンドアルバム「ESCM」に収録され、Single, Remix盤もリリースされました。
リリースから現在まで、公式・非公式問わず他のアーティストによるRemixが多く作られ、いまなお人気を維持しており、トランスシーンの長い歴史の中でも、代表曲の一つに数えて差し支えがない有名曲です。

なお、PvDはPaul van Dykの事で、この略称もよく用いられています。
BT – Flaming JuneはBTの楽曲として有名ですが、BT & PvD “Original Mix”と書かれている通り、Paul van Dykとの共同作曲で、この時のPvDはRemixerというわけではありません。

なお、PvDによるRemixは2012年にオランダのダンスレーベル、Black Hole RecodingsからリリースされたRemix盤で実現しており、こちらに収録されています。

今回は紹介から省きましたが、1997年のリリースでもChicaneによるRemixが収録され、他国のライセンスリリース版では他のアーティストのRemixも存在しています。

日本でも非常に人気が高い曲で、この時期のメロディアスで荘厳なタイプの曲は、一般的に「エピックトランス」と呼ばれる事が多いですが、日本と海外では若干意味合いが違うように感じられ、また、そこまでメジャーなサブジャンル区分ではないのかEpic Tranceなどで検索しても、あまり曲情報は出てきません。
なお、海外レビューでも曲の特徴として「Epic」と表現される事はよくあります。

 

Chicane feat. Moya Brennan – Saltwater (1999)

 

Chicane(シケイン)はイギリスの音楽プロデューサーで本名はNicholas Bracegirdle(ニコラス・ブレースガードル)。

代表曲の一つである「Saltwater」は日本でもBT – Flaming Juneと共にエピックトランスの代表曲として人気があります。
Chicaneの出世作と誤解されがちですが、そちらには1996年に多くの国でライセンスリリースされた「Offshore」が該当すると思われます。

「Saltewater」などのこの時期のChicaneの一部楽曲については、リリース元であるXtravaganza Recordingsと後に発生した訴訟の関係で、再録音版でしかリリースできない状態となっています。

聴き比べが出来ない状態なので、現在Armada Musicからリリースされているシングルなどが再録音盤かは確認できていませんが、いずれにせよ本人が作曲したものであるのは間違いないので、この辺は些細な問題でしょう。

(訴訟問題の詳細はwikiを参照ください、前述のAirscapeもこのレーベルからリリースしていました)
https://en.wikipedia.org/wiki/Chicane_(musician)


少し話題が脱線しますが、
Chicaneは2000年以後のトランスのメインストリームが変化した後も、わが道を行くタイプのプロデューサーでしたが、2009年に全く毛並みが違うキャッチャーな新曲「Poppiholla」をArmada Musicと契約し世間を驚かせました。

古参ファンからは、厳しい評価を貰う事もある曲ですが、その評価の大半は「誰がその曲を作ったか」という要素が過分に含まれた批評にすぎず、実際には当時のクラブシーンで受け入れられ、多くのDJにプレイされました。

 

Robert Miles – Children [Dream Version] (1995)

 

絶対に外す事が出来ない90年代のトランス、そしてクラブミュージックの代表曲。
空前の大ヒットで商業的にも成功し、90年代後半の急激なトランスシーンの拡大のきっかけになりました。

同じく代表曲の「fable」と共にTV番組などでも流れる事もありますので、曲名は知らなくても聴いた事がある方は多いかもしれませんね。

残念ながら、2017年に47歳という若さで病没されています。
彼の来歴については英語版だけではなく、日本語版wikipediaでも詳細にまとめられていますので是非ご覧ください。

ロバート・マイルズ (wikipedia)

 

Darude ‎– Sandstorm (Original Mix) (1999)

 

Darude(ダルード)は、本名Toni-Ville Henrik Virtanen(トニ=ヴィッレ・ヘンリク・ヴィルタネン)でフィンランドを代表するDJです。

現在はEDMにシフトしていますが、初期はトランスをメインに作曲していました。

TVでもよく流れる有名曲なので、前のRobert Milesの楽曲と同様にタイトルを知らなくても、聴いた事がある人は非常に多いでしょう。

フィンランドはそれほど人口が多くはないですが、クラブシーンは活発で、Darude, Orkideaなど世界のクラブミュージックシーンで活躍するDJを多く輩出しています。

 

Armin van Buuren – Communication (Original Mix) (1999)

 

トランスシーンのレジェンド、Armin van Buuren(アーミン・ヴァン・ビューレン)の初期代表曲。
1997年にリリースされた「Blue Fear」が既にヒットしていましたが、続くこの曲で評価を決定づけたと言ってよいと思います。

この曲は、当時「Armin」の名義でリリースされた楽曲になりますが、わかりやすくするため最近はArmin van Buurenの楽曲として記載される場合が多いようです。


トランスで最も人気がある曲と言えば、人によって意見が分かれるでしょうが、最も人気があるDJと言えば満場一致で彼になるでしょう。

DJの人気投票であるDJ Mag Top 100で過去5回も1位を獲得しており、その後も常に上位をキープしています。
2021年はDavid Guetta、Martin Garrixに次ぐ3位でしたが、EDM全盛の中でも、トランス系DJで唯一10位以内にランクインしている時点で突出した人気を維持しているのがわかりますね。

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この記事を書いた人

TranceやHouseなどのEDMも日本でもメジャーなジャンルとなり、日本語媒体で多くの情報が発信されていますが、ビッグネームに話題に偏っている事に不満があり、もう少し掘り下げた話題を取り扱うブログがあっても良いのではないか?と思い当ブログを開設しました。

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