(Trance)’90年代のおすすめトランス10選 Part.2

日本では2001年頃から本格的にトランスのブームが始めましたが、本場ヨーロッパでは90年代後期からトランスシーンが大きく盛り上がりを見せ、この時期にも数多くの名曲が発表されました。

Part.2では前回含める事ができなかった90年代の有名曲を紹介したいと思います。

こちらのPart.1も是非ご覧ください!

目次

Salt Tank – Eugina (1994)

基本情報

Artist:Salt Tank(ソルト・タンク)
初出:1994年(※1994年はプロモリリース、本リリースは1996年)
主なリリース元:Internal Records

Salt Tank(ソルト・タンク)はイギリス出身のDavid Gates、Malcolm Stanners、そしてボーカリストのAndy Roseによるプロジェクト。

主にトランス・アンビエントを得意としているアーティストで1991年に彼ら自身のレーベルである4 Real CommunicationsからSalt Tank – Ease The Pressureをリリースしデビューしました。

Salt Tank – Euginaは1994年にリリースされたE.Pに収録されたのが初出ですが、1996年にリリースされたSalt Tank – Eugina ST 6にEugina (Pacific Diva)として再リリースされたものがヒットし、一気にSalt Tankの名前が知られるようになりました。

こちらは1990年代後期にトランスブームが起こる以前のヒット曲の一つとなります。
1990年代中期頃までのトランスはどちらかといえばテクノ寄りの楽曲が多く、その中では異色な曲でもあります。

またEuginaに関してはトランスブーム真っ最中の2000年にLost LanguageからRemix盤もリリースされました。
そちらにはSalt Tank自身のRemixの他、2000~2010年代にかけて活躍したTrance/House系DJのMichael Woods、トランスシーンのトップDJの一人に登りつめEDM(Tech House)へ転向して今なお活躍中のTiestoによるRemixが収録されています。

Albion – Air (Original Mix) (1998)

基本情報

Artist:Albion(aka Ferry Corsten)
初出:1998年
主なリリース元:Platipus Records

AlbionはSystem F名義などでも知られ、オランダを代表するトランス系DJであるFerry Corstenの別名義、そしてこの曲は彼の初期ヒット曲の一つでもあります。
Art of Trance、Union Jackなどで知られるイギリスのPlatipus Recordsから1998年にリリースされました。

2000年にはFerry Corsten本人によるRemix(Open Air Remix)と、ドイツを代表するDJの一人であるOliver LiebによるRemixを収録したRemix盤もリリースされています。

Oliver Liebは1988年から音楽活動を始めて2020年代に入ってもなお活躍している古参DJで、さすがに近年はリリースが低調であったりDJとしての活動も昔ほどは多くありませんが、トランス最大フェスであるLuminosity Beach Festival 2023にもClassic Set担当のDJとして参加しています。

またさらに2020年にはAlbion – Air (Dylhen Remix)がArmada Musicからリリースされるなど息の長い曲になりますね。


Vincent De Moor – Flowtation (1996)

基本情報

Artist:Vincent De Moor
初出:1998年
主なリリース元:Deal Records、Armada Music(※後に権利を取得)

こちらもSalt Tank – Euginaと同様に1990年代後期のトランスブーム以前のヒット曲の一つで、Vincent De Moorの出世作でもあります。
私個人としてはトランスブーム期のトレンドを先取りしていた凄まじい先進性を秘めた曲だと考えています。
何度か本人によるリメイクも行われておりその中ではFlowtation 2002が一番有名でしょうか。


なお2024年(初出から28年後!)にもArmada MusicからDan StoneによるRemix盤がリリースされています。


Vincent De Moorはあまり表に出てこないアーティストでしたが、トランスブーム期のファンの評価が非常に高く、よくArmin van Buuren、Ferry Corsten、Tiestoがダッチトランスの三大スターのように語られる事もありましたが彼が音楽活動に積極的であったならここに彼の名前が入って四天王と言われたのは間違いないでしょう。

しかし実際には2000年代で活動は終了、その後は音楽業界にも携わっていないと言われています。
Vincent De Moor – Wikipedia

Jam & Spoon Feat. Plavka – Right In The Night (1993)

基本情報

Artist:Jam & Spoon
初出:1993年
主なリリース元:JAM!、EpicなどSony Music系の各国のダンスレーベル

Jam & SpoonはMarkus Loffel(マルクス・レフェル)、Rolf Ellmer(ロルフ・エルマー)によるプロジェクトで1991年から活動を開始しました。

1992年にリリースしたJam & Spoon – Stellaがヒット、翌年にリリースされたこちらのJam & Spoon Feat. Plavka – Right In The Night (Fall In Love With Music)が大ヒットした事で人気を不動のものとしました。
ちなみにトランスがジャンルとしてマイナーだった時代だったのでテクノ系のアーティストと分類されている事もあります。

1990年代後期にトランスブームに突入、2000年代に入ってからも活躍をつづけていましたが2006年にMarkus Loffelが心臓発作で急逝した事で活動が終了し、この事は当時大きなニュースとなりました。
その後、Rolf Ellmerは「Jam El Mar」「Jam」などの名義でソロで音楽活動を継続しています。

Armin van Buuren Pres. Rising Star – Touch Me (Original Vocal Mix) (1999)

 

基本情報

Artist:Armin van Buuren
初出:1999年
主なリリース元:Armind/United(※現在はArmada Musicが権利を保有)

トランス・EDM界のレジェンドArmin van Buurenの初期ヒット曲の一つ。
Part.1でArmin van Buuren – Communicationが彼の評価を決定づけたと記載しましたが、同年にリリースされたこちらの楽曲もシーンで高い評価を獲得しました。

ちなみにVocal Mixと銘打たれていますが、当時基準でのVocal Mixでありガッツリ歌詞が入っているという事もなくTouch Meというボイスが入る程度だったりします。

Rising Starという名義はRemixでもよく使用されていましたので当時のArminの曲を漁りたい場合は注意してください。

 

Art of Trance – Madagascar (Original Mix) (1998)

基本情報

Artist:Art of Trancee
初出:1998年
主なリリース元:Platipus Records(現:Platipus)

Art of TranceはSimon Paul Berry(サイモン・ポール・ベリー)のメイン名義、90年代前半のトランス黎明期から活動しているDJで、Art Of Trance – Madagascarの空前のヒットでその地位を確立しました。

また90年代~2000年代のトランスブーム期にかけてトランスシーンの発展の一翼を担ったPlatipus Recordsのオーナーでもあります。

「Madagascar」に関してはトランスミュージックの代表曲の一つと言っても差し支えなく数多くRemixがリリースされています。

1998年に同時リリースされたCygnus X Remix、1999年にリリースされたFerry Corsten Remixが最も有名でしょうか。その後もPush(現在はM.I.K.E. Push名義)、Richard Durandなど数多くのRemixがリリースされました。

近年でも2020年にトランス系最大手レーベルであるBlack Hole Recordings傘下のNocturnal KnightsからAlex M.O.R.P.H.によるRemixがリリースされています。

 

Solar Stone – Seven Cities (Solar Stone’s Atlantis Mix) (1999)

基本情報

Artist:Solar Stone(※現Solarstone)
初出:1999年
主なリリース元:Hooj Choons、Lost Language、Armada Music(※後のライセンスリリース)

Solar Stoneははイギリス出身のRich Mowattを中心としたプロジェクト、ただし2006年以降はソロプロジェクトとなっています。
ちなみにこの楽曲がリリースされた1999年当時はAndy Buryとの共同プロジェクトでした。
また現在はSolarstoneに名義を改称しているので注意してください(おそらくエゴサ対策と思われる)

Solar Stone – Seven Cities (Solar Stone’s Atlantis Mix)はバレアリックな雰囲気のある曲でSolar Stone最大のヒット曲です。

この曲がリリースされた1999年当時はオランダ勢を中心に日本で言う所の商業的なユーロトランスがヒットしていましたが、Solar Stoneの場合はそこから入った層というより、それ以前からのトランスファンやProgressive系を好んでいたファンから高い評価を得ていたアーティストでした。
玄人向けというと言い方は変ですが、長くトランスを聴けば聴くほど良さがわかってくるアーティストだと思います。

当時は契約の関係などの要因で複数の名義を使い分けるのが主流でしたが、他のアーティストと同様にSolarstoneも「Young Parisians」「Liquid State」など複数の名義をもっているので過去曲を漁る場合は注意してください。

Rich MowattはDJやアーティストとしての活動の他、これまでに「Solaris Recordings」「solarSwarm Recordings」など多くのレーベルを立ち上げており、それらでリリースしてきた楽曲を管理するSolarstone Music Limitedの他、Black Hole Recordingsと提携してPure Trance Recordingsを運営しています。

Sasha – Xpander (Original Mix) (1999)

トランスかProgressive Houseのどちらか微妙な曲なのですが、トランス系のDJ Mixでも定番曲だったので含めました。

Sashaは90年代の電子音楽シーンを代表するDJで、本名はAlexander Paul Coe(アレクサンダー・ポール・コー)で英国出身。主なジャンルはトランス、プログレッシブハウスなどです。
John Digweedとコラボする事が多く両者ともに90年代の電子音楽シーンに大きく貢献しシーンを牽引しました。

「Xpander」に関しては当時の日本ではダッチトランスが主流だった所為か同時期に発売された曲の中では理不尽と思えるほど日本で知名度が無いのですが、世界的に見れば長いEDMの歴史の中でも名曲の一つとして高く評価されている曲です。

例えばクラブ系メディアであるmixmagが2013年に実施した「史上最高のダンストラックは何か?」というアンケートでもEDMブーム真っ最中にも関わらず9位にランクインしました。
参考:https://mixmag.net/read/what-is-the-greatest-dance-track-of-all-time-features/

Mauro Picotto – Lizard (1998)

Mauro Picotto(マウロ・ピコット)はイタリア出身のDJで、こちらの楽曲は欧州を中心に諸外国でレコードがライセンスリリースされるなど彼の最初のヒットとなりました。
この後もIguana、Pulsar、Komodoなどヒット曲を連発していく事になります。

当時、スタイル的にはハード/テックトランスと見なされており同スタイルを代表するDJに位置づけされていましたが、彼の90年代のヒット曲はどちらかと言えば万人受けする商業的な楽曲が中心であり、同スタイルのDJとしての評価が確立されたのは2000年代に入ってからとなります。
2002年にリリースされたアルバム「Mauro Picotto – The Others」ではそれが顕著で、同スタイルファンからも非常に評価が高い作品でした。
以下に同アルバムの楽曲を2曲ピックアップ。

Hybrid – Finished Symphony (Original Mix) (1999) ※番外

90年代ならこの曲も絶対に外せないという事でピックアップ。
説明不要の90年代後期の大ヒット曲で日本でも非常に知名度が高い曲です。

ソフトシンセの進化で2024年現在ではオーケストラ音源も数多く発売される時代になりましたが、1999年当時は「シンフォニックな」曲を作る事は可能でもまだまだここまでの曲をシンセだけで作るのは難しく、この楽曲のオーケストラ部分も実際にRussian Federal Orchestraが演奏したものを使用しており唯一無二のような曲でした。

ジャンル的にはBreakbeat(ブレイクビーツ)やBreaks(ブレイク)になるのでしょうが、このジャンルは意外とProgressive Trance系と親和性があり、同ジャンルのアーティストがBreaksに分類される楽曲もリリースする事もしばしばあります。

またこの曲は2008年当時、一大ブームを引き起こし他のアーティストにも大きな影響を与える事になるDeadmau5によるRemixがリリースされておりこちらも大ヒットしています。

あとあまり知られていませんが、Hybrid – Finished SymphonyはHybrid本人によるRemix作品です。
「Finished」ならその基もあるという事でHybrid – Symphonyという曲が1996年にリリースされています。
初めて聴く方もおられるかもしれませんが聴いてみるとほぼ原形はこの時に出来ていたとわかりますね。




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この記事を書いた人

TranceやHouseなどのEDMも日本でもメジャーなジャンルとなり、日本語媒体で多くの情報が発信されていますが、ビッグネームに話題に偏っている事に不満があり、もう少し掘り下げた話題を取り扱うブログがあっても良いのではないか?と思い当ブログを開設しました。

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