(Trance)レーベル紹介:Somatic Sense Recordings

こちらは個別のレーベルについて紹介する記事になります。

目次

レーベルの基本情報

  • 読み方:ソマティック・センス
  • 所在国:オランダ
  • ジャンル:トランス、プログレッシブトランス
  • 公式サイトURL:閉鎖済 (参考:2006年のweb.archive
  • 主なレーベル活動期間:2003年~2007年

Somatic Sense Recordingsはオランダ人DJであるDJ Precision(プリジション)によって2003年に設立されました。

ジャンルは主にトランス、プログレッシヴトランスで、「Somatic Sense Future Sound」「Somatic Sense Vision」などのサブレーベルも立て続けに設立。

トランスシーンの大物DJのセットでもプレイされる良質な楽曲を数多くシーンに送り出しましたが、DJ Precisionの音楽活動の引退に伴い、惜しまれつつも2008年にレーベルの活動を終了しました。

レーベルの特徴
レーベルの活動期間は短かったものの、Somatic Senseが当時のトランスファンの間で大きな支持を受け、印象に残り続けているのは下記の特徴が要因として挙げられます。
  • 当時の実力派若手アーティストの楽曲が多数リリース
  • 正統派のユーロトランスを主体
  • 黎明期であったmp3ダウンロード販売にいち早く対応

 

当時の実力派若手アーティストの楽曲が多くリリース

Somatic Senseからは、後に大手レーベルと契約したり、大物DJの楽曲のRemixerに抜擢されたりする、実力派若手アーティストの初期曲・デビュー曲が多くリリースされました。

その中で代表的なアーティストでは以下が挙げられます。

Symmetry (aka Sean Tyas)
アメリカ人DJで、スイスを中心に活動するSean Tyasの別名義で、「Forget」という楽曲を当レーベルから2004年にリリースされています。
この曲がデビュー曲というわけではないのですが、極めて初期の曲になります。
それから2年後、2006年に英国のレーベルのDiscoverからリリースした「Sean Tyas ‎– Lift」で脚光を浴び、
その後、DJ Mag Top 100にランクインするなどUplifting Tranceの代表的なDJとして活躍しています。

Activa (aka Solar Movement)
英国のDJ、Activaの別名義で2004年に当レーベルからリリースされた「Activa feat. Aled Mann – In Essence」でデビュー。
Solar Movement名義でも同レーベルから楽曲をリリースしています。
Somatic Senseの活動が停滞、そして閉鎖した後は、英国のレーベルDiscoverを中心に楽曲をリリースした他、
上記のSean Tyasと共同で、2019年にBlack Hole Recordings傘下でRegenerate Recordsを設立しています。
レーベルが閉鎖した場合、レーベルが曲の所有権を持ったままになってしまい、バックカタログの入手が困難になる場合も多いのですが、Activaの場合は、彼自身が曲の権利を所有しているらしくSomatic Sense時代の楽曲も含め、各種ダウンロードサイトで購入可能です。(レーベル名はActiva Music)

8 Wonders
Somatic Senseから2004年に「The Morning After」でデビュー。
Uplifting Tranceを主体としていますが、多彩な曲を作曲します。

同年には早くも英国の大手レーベルHooj Choons傘下のプログレッシヴトランスレーベル「Lost Language」とも契約。
その後、Anjunabeats、Armada Muisic、Black Hole Recordingsなどトランス系の大手レーベルと契約しキャリアを重ねていきました。

Carl B
Somatic Senseから2005年に「All Day / Radiance」でデビュー。
2000年代初期の正統派ユーロトランスといった感じで、当時のトランスファンに愛されました(なお2010年代はProgressive Trance寄り)

しばらくは、同レーベルを中心に活動していましたが、レーベルの活動が停滞しはじめる時期からは、別レーベルでの活動が増え、
2010年にオランダの大手レーベルであるBlack Hole Recordingsとリリースを契約しました。
2021年現在、既に音楽活動は引退しているようです。

正統派のユーロトランスを主体としたレーベルの特色

Somatic Senseの活動が特に活発であった2004年~2007前後のトランスシーンは、90年代終盤~2000年代初期のオランダ・イギリス勢を主体とする、アップリフティング、メロディーを重視した日本でいう「ユーロトランス」のブームも下火となっている状態でした。

この時期はエレクトロ、テックハウスなど別ジャンルとのクロスオーバーや作風のシフト、大物DJを中心にボーカル曲へシフト、商業的な楽曲も増えた事でブーム期からトランスに聴き始めた旧来からのファンにとっては不満が溜まっている状態でした。

そのような状況で、Carl B、8 Wondersに代表されるようにブーム期のトランスを彷彿とさせるタイプの楽曲をリリースした事で、旧来からのファンを多く獲得しました。


黎明期であったmp3ダウンロード販売にいち早く対応

まず背景としまして、Somatic Sense Recordingsが設立された2003年当時の音楽市場では、まだCD(クラブミュージック市場はレコード)が主流でしたが、ADSLの普及などネットの回線速度高速化に伴い違法ダウンロードが拡大していました。

その対策として、大手レコード会社の一部はコピーコントロールCDを導入を行うなどで対策を試みましたが、ダウンロード販売を普及させるのではなく、このような技術を導入した背景としましては、杞憂であった事を歴史が証明しているのですが、ダウンロード販売を行う事により、より違法ダウンロードが助長されるのではないか、という懸念をレコード会社側は抱いていた事によるものです。

クラブミュージック業界においても違法ダウンロードによる影響は大きく出ており、レコード市場を圧迫していました。

そのような環境下で、当時普及しはじめたのがmp3のダウンロード販売でした。

ダウンロード販売の普及による悪化への懸念をを持っていたのはクラブミュージック市場も同様で、多くの大手レーベルは及び腰で、いち早くデジタル販売に対応したのは、新興・中小レーベルです。
Somatic Senseの場合も、リリースの質の高さも当然ありますが、デジタルという新しい市場にいち早く対応した事が、多くのクラブミュージックファンに楽曲が触れられる機会となり、支持を増やす事になりました。

なお、同時期、同じようにデジタルリリースにいち早く対応して成功したレーベルとしては、当時はまだ新興レーベルであった「Armada Music(2003年~)」や、同時期に大きく規模を拡大した「Anjunabeats(2000年~)」の他、中小レーベルでは「Fundamental Recordings (2003年~2005年)」「Alter Ego Records(2005年~)」などが挙げられます。

主なサブレーベル・ブランド

Somatic Sense

Somatic Senseのメインのレーベル。
Uplifting Tranceが主体で、前述のCarl Bや、8 Wondersの他、当時、他レーベルでデビューした有力な若手アーティストの初期の楽曲を多数リリースしました。

Somatic Sense Future Sounds

プログレッシヴトランス系のサブレーベル。
カナダ人アーティストのPeter McCowan (aka Alucard)、イスラエル人アーティストのHydroidの楽曲を中心にリリースしていました。

Somatic Sense Vision

メインレーベルであるSomatic Senseと比べて、さらにUplifting系に寄ったレーベルになります。
このレーベルからは、後にDJ Mag Top 100にもランクインするなど、Uplifting Tranceの代表的なDJとして名を馳せるSean Tyasの初期曲(Symmetry名義でリリース)や、同じくUplifting Trance系の有力なDJとなるActivaのデビュー曲(Solar Movement名義でリリース)が発表されています。

なお、Sean TyasとActivaは2019年にBlack Hole Recordings傘下でのRegenerate Recordsを共同で設立しています。
そのほかでは、Van Gelder (他レーベルからIcone名義で2004年にデビュー済)、Volition(後にVengeance名義でArmada Musicと契約)などが有名。

主なDJ/アーティスト・楽曲

再生数が少ない動画ばかりですが、当時はまだYouTube設立直後で同サイトが有名になりはじめた頃にはSomatic Senseが閉鎖しており公式動画もないのが主な要因です…。

「レーベルの特徴」の項目で紹介しきれなかったアーティストの曲もこちらで、触れたいと思います。
SignalRunners – Backfire (Original Mix)

SignalRunnersはスコットランド人アーティストAlan Nimmo、アメリカ人アーティストAndrew Bayerによる名義、既に他レーベルからデビューはしていましたが、 Breathe / Recoilに次いで彼ら2番目のリリースになります。
メロディックで疾走感のあるUplifting Tranceで、Somatic Senseからリリースされた楽曲の中でも、トランス初心者の方でも聴きやすい曲だと思います。

2010年代からトランスを聴き始めた方は、Andrew Bayerという名前にピンと来る所もあるかもしれません。
Anjunabeatsを中心に活動しているアーティストで、BT & Andrew Bayer ‎– The EmergencyでBTともコラボレーションするなどSignalRunnersとしての活動が終了した後も活躍しています。

 

Hydroid ‎– Incurved
イスラエル人アーティストで、Hydroid ‎– Burn ProofでSomatic Senseからデビュー。
こちらは同レーベルからの2番目のリリース、メロディックなProgressive Tranceですね。
Uplifting Trance主体のレーベルでしたが、HydroidのようにProgressive寄りのアーティストの楽曲もいくつかリリースしていました。
Somatic Sense以外でも、Paul van Dyk率いるVandit Recordsなどでも曲をリリースしましたが、2008年頃に音楽活動は終了したようです。

Alucard pres. The 49th Line ft. Jennifer Grimm – Blue On Blue (Original Dub Mix)
カナダ人アーティストで、Somatic Senseからのリリース数が多く、同レーベルの主力アーティストと言ってよいでしょう。
本名のPeter McCowanや、Sonar Methods名義でも楽曲を多数リリースしました。
同レーベルでは珍しいボーカルモノ。
Juno Downloadでも取り扱いがなくなっているリリースですが、コンピレーションアルバムにライセンスされた曲ですので、2022年1月現在、ITunes StoreでOriginal Vocal Mixなどは購入可能です。

Symmetry – Forget (Original Mix)

 

Activa featt.Aled Mann – In Essence

8 Wonders – The Morning After (Thrillseekers Remix) (Somatic Sense) (2004)

Carl B – All Day

 

購入できるショップ等

レーベル閉鎖に伴い、Beatportなど大半のショップで取り扱いが終了していますが、Juno Download, Amazon, ITunes Storeなどで一部楽曲の販売が継続されている他、他社にライセンスされたコンピレーションアルバムに収録された楽曲が間接的に購入可能です。

Juno Download
URL : https://www.junodownload.com/

Amazon
URL : https://www.amazon.co.jp/

ITunes Store
URL : https://www.apple.com/jp/itunes/

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この記事を書いた人

TranceやHouseなどのEDMも日本でもメジャーなジャンルとなり、日本語媒体で多くの情報が発信されていますが、ビッグネームに話題に偏っている事に不満があり、もう少し掘り下げた話題を取り扱うブログがあっても良いのではないか?と思い当ブログを開設しました。

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